おすすめの一冊

2016.01.20
「白い巨塔」、「続白い巨塔」

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国立浪速大学医学部の財前五郎は次期教授を何としても射止めようと、ありとあらゆる手段を使う。その財前と対照的なのが、かつての同期生で、病理学教室で共に学んだ里見脩二である。財前は教授の地位を手にするが、医療事故を起こして訴えられてしまう。医療事故を何とか隠蔽し勝訴を勝ち取ろうとする財前。一方、里見は、患者の死について純粋に医学的な見地から法廷での証言を行う。だが、自学の教授に不利な証言をしたという理由で、大学を追われてしまうのである。旧帝国大学教授として学術会議会員にも当選し華やかな研究生活を送る財前。それに対し、財前も密かに恐れるほどの優れた内科医の里見は、近畿がんセンター病理診断部次長の職に甘んじ、奈良の山間部で地道に胃がん検診をして一人でもがん患者を助けようとする。続編は山崎豊子の本意ではなかったようだが、「社会的責任」を悩みぬいた末、財前自身の専門である噴門ガンで財前は死去する。山崎豊子の作品は、「不毛地帯」、「沈まぬ太陽」等多々あるが、現代社会の矛盾と不条理を鋭くえぐり、読者に訴えかける作品が多い。「白い巨塔」は学生時代何十回と読み返し、読み返すことによって深く人間とは、人はどう生きるべきなのか、そして社会とは。現実の人生や社会に対して深く考えさせられた1冊である。

※注:図書館は文庫版全5巻を所蔵しており、4・5巻が「続白い巨塔」にあたります。